ダイビングとサメ|事例や対策を理解し安全に楽しむ方法
更新日:2023.04.10.Mon   投稿日:2021.07.09.Fri目次
「スキューバダイビングをやってみたい!でもトラブルや事故が怖い…」という方は多いでしょう。海にいるさまざまな生物の中でも特に恐れられているのがサメです。映画『ジョーズ』をはじめとしたサメ映画の影響もあり、海に行く際は必ずと言っていいほど警戒の対象となるサメ。しかし、サメについて少し知っておくだけで、サメに関する事故に巻き込まれるリスクが大幅に減少することをご存知でしょうか。
記事の前半ではサメに関するデータをいくつか取り上げ、サメに襲われないための基礎知識を紹介していきます。 また、記事の後半では「シャークダイブ」について触れ、ダイビング中にサメを間近で感じたい人にオススメできるダイビングスポットを日本、海外それぞれで紹介します。
サメの襲撃事例
サメに襲われるのは一体どのような状況で起こるのでしょうか。まずは具体的な事例を紹介します。
海外の事例
最近起きた海外の事例は、2021年1月7日にニュージーランドで発生しました。ニュージーランド北島北部の主要都市オークランドに程近いワイヒ・ビーチで泳いでいた若い女性が、サメによって海中で負傷し、直後に亡くなりました。ニュージーランドの海域ではホオジロザメが保護対象となっており、海岸にはサメが当たり前のようにいるとのこと。
しかし、ほとんどが無害で人間に接触することはほとんどないそうです。ニュージーランドにおけるサメの襲撃による死者も、過去170年間で13回しか報告されておらず、頻繁に発生する事例ではないようです。
日本の事例
日本では、1992年3月8日に愛媛県松山市堀江沖でサメによる死亡事故が発生しています。堀江沖2.3km、水深22メートルの海底でヘルメット式潜水器具を用いてタイラギ貝漁を行っていた潜水漁師が、サメに襲われ亡くなりました。
回収された潜水服には2個の鋸歯が残されており、咬み跡や当時の水温、周辺の出没情報などからホオジロザメに襲われたのではないかとされています。
日本のダイバーの死亡事例はない
厚生労働省が発表している人口動態調査をもとにすると、記録が残っている限り1995年から2014年で死者は4人です。4人のうち日本において、ダイバーがサメに襲われた事例はありません。怪我をした人も含めると1580年から現在までに日本では合計15人しかいません。サメに襲われる確率は、およそ370万分の1。宝くじで2000万円以上当たる確率よりも高い確率です。
本来サメは臆病かつ神経質な性格であり、サメが人間を襲うこと自体とても稀なケースです。かといって「ダイバーはサメに襲われた時のことなんて考えなくてもいいのか」と油断してはいけません。
数こそ少ないものの、海外ではダイバーがサメに襲われたケースも存在し、日本で同様の事件が起きる可能性も十分にあるためです。
ゆえに、下記で「どういった時に」「どういったサメが」襲うのかについて説明していきます。さらに、ダイバーが気をつけるべき具体的な行動、対策をお伝えします。
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ダイビングでサメに襲われることはある?
サメが人を襲う場合ってどんな時?
サメが人を襲うケースのほとんどは、人を餌と間違えた時です。サメは嗅覚が非常に優れた生物であるため、海中に溶けだした血液の臭いから獲物の存在を知覚し、襲いかかります。
そして、サメが嗅ぎつけるものは血液だけではありません。
海中で排泄してしまうと、サメはその臭いを嗅ぎつけて向かってくることもあります。もちろん海中での排泄はマナーとしても良くないので、ダイビングの前にはしっかりとトイレを済ませておきましょう。
他にも、嗅覚以外にサメがダイバーを餌だと判断してしまう要因としては「水面で身体を動かしたときに発生するバシャバシャという水音」や「装着したアイテム、アクセサリーなどに反射した光」などが挙げられます。
よってダイバーはこれらに気をつけ、サメから餌と間違われないようにすることが重要です。
どういったサメが人を襲うの?
・ホオジロザメ
ホオジロザメは、有名な映画『ジョーズ』のモデルにもなったサメです。体長は平均して4~5m程ですが、大きな個体では体長7m、体重は3tを超えます。
ホオジロザメは300本を超える鋭い歯と、100Lの海水に溶けた1滴の血液を嗅ぎわけるほど鋭敏な嗅覚を併せもつ、海のハンターです。主な餌である魚類以外にも、アザラシやオットセイといった中~大型の哺乳類を食べることもあります。
・イタチザメ
イタチザメは熱帯や亜熱帯の周辺に生息するサメです。日本では関東以南の海域で見られます。現時点で発見されているものは最大で8mほどです。
イタチザメ最大の特徴は特殊な形状に発達した歯であり、ウミガメや甲殻類などを甲羅ごと噛み砕いて食べてしまいます。
・オオメジロザメ
オオメジロザメは、熱帯や温帯の海域に幅広く生息しているサメであり、体長は2m~4m程度、体重は最大で130kg程度です。
オオメジロザメ最大の特徴は、海水魚でありながら淡水への適応能力が非常に高い点です。過去には、河口から4000㎞にわたって河を遡った事例も記録されています。
餌としては魚類以外にも、カメなどの爬虫類や鳥類などの陸生の動物を捕食することもあります。
・その他、人を襲うことのあるサメ
上記3種のサメ以外にも、人を襲った事例が記録されているサメは複数種存在します。なかでも、ヨシキリザメ・ヨゴレザメの2種は日本周辺の海に生息し、人を襲った事例が確認されているサメです。2017年に静岡県の遠州灘でサーファーがヨシキリザメに足を噛まれる事故が発生しています。
ヨシキリザメ・ヨゴレザメは大量に人を襲っているわけではありませんが、国内におけるダイビングの際には、サメに十分な注意が必要です。
ダイビングで出会えるサメの種類
・シュモクザメ
名前の由来は鐘を打ち鳴らす撞木(しゅもく)で、金槌のような頭をしているので「ハンマーヘッドシャーク」とも呼ばれています。伊豆などの温帯から沖縄以南の亜熱帯・熱帯地域に生息し、体長は2m〜6mに達することあります。100匹以上もの大きな群れを作ることもあり、アジやエイなどの魚やイカ、タコを餌としています。
・ドチザメ
漢字では「奴智鮫」と書き、日本周辺の北海道〜九州や朝鮮半島周辺に生息し、やや水温が低い場所の浅い水深で見られます。東京湾で釣られることも…。体長は1.5m程度で、小型の魚類を捕食します。他の多くのサメ同様に単独で生活をしますが、餌の多い場所などにドチザメが集まって群れていることもあります。
・トラフザメ
虎斑模様のサメで、東南アジアなどではヒョウ柄を表す「レオパードシャーク」と呼ばれることもありますが、正式な英語名は幼魚の頃の白黒シマシマ模様から「ゼブラシャーク」です。熱帯の浅いサンゴ礁に生息し、夜行性なのでダイビングで遭遇する場合は水底で寝ていることが多く、貝や甲殻類を食べるおとなしいサメです。
・ジンベエザメ
ダイビングでも水族館でも人気の世界最大のサメ。世界中の熱帯・亜熱帯・温帯を回遊し、日本では沖縄や伊豆半島、伊豆諸島、房総半島の各地に出現してダイバーの間でニュースになります。海外の餌が豊富な地域では群れで見られることも。最大全長は20mに達しますが、餌は大量のプランクトンやオキアミを海水ごと吸い込みます。
・ネムリブカ
フカヒレの「フカ」が名前につき、夜行性で日中は寝ている姿をよく見かけることが名前の由来です。英語名は「ホワイトチップリーフシャーク」で、ヒレの先端が白くなっているのでホワイトチップと呼ばれています。熱帯域の浅いサンゴ礁に生息し、岩陰や洞窟の水底でじっとしていることが多いです。体長は最大でも1.6m程度の小型のサメです。
サメに遭遇したら?原因とダイバーが取るべき対処法
サメと出会ったダイバーが気をつけるべきことは?
下記ではサメに、餌と間違われないための方法と、最終手段としての方法を説明します。
・背を向けて逃げない
ダイビング中に予期せずサメと出会ってしまった場合、絶対に背を向けて逃げないでください。場所は海、いわばサメのホームグラウンドです。サメから泳いで逃げ切ることがいかに難しいか。冷静に考えれば容易に想像がつくでしょう。
サメは、人間を餌だと勘違いした場合に襲います。サメから背を向け、急いで逃げることで、逆にサメを刺激し捕食対象として見られてしまいます。よって、サメがいるような海域でダイビングをする際は、ダイビング中サメに出会っても、決して背を向けて逃げてはいけないことを心に留めておいてください。
・サメから目線を外さない
では、背を向けて逃げられないならどうすればよいのでしょうか?答えは非常にシンプルです。 「サメから目を離さず」「ゆっくりと後ずさりするように」逃げてください。こうすればサメの動きを確認しながら、サメに余計な刺激を与えることなく、ゆっくりと距離をとれます。
・音を立てない&急に動かない
先述のポイントと同じような餌と勘違いされないための行動です。余計な音や、急な動き、特に「急に浮上する」「水面付近で水音を立てる」などをしてしまうと、サメは弱った餌がいると判断し、襲い掛かってくるかもしれません。
たしかに、サメと遭遇してしまって気持ちが焦ってしまう気持ちも理解できます。しかし、落ちついて行動できれば、サメに襲われることはありません。 はじめにも述べた「本来サメは人を襲わない」という文言を心の中で唱え、一度冷静さを取り戻してください。
・サメがいなくなるのを待つ
上記を踏まえ、サメがダイバーから興味をなくし、いなくなるのを待ちましょう。余計な刺激さえしなければ、サメは自然とどこかに行ってしまうはずです。
・それでも攻撃されてしまったら
仮にサメと出くわした際に上記のような点を守っていたとしても、サメから攻撃を受けてしまうかもしれません。最悪の状況を防ぐために、覚えていただきたいことが二つあります。
一つ目は、サメから逃げられない場合、サメの弱点である鼻先、エラを攻撃することです。しかし、あくまで明確な攻撃の意思を示したサメが、逃げられない位置まで迫ってきた時のみに使える最終手段であることを忘れてはいけません。襲う意思のなさそうなサメに対して、ダイバー側からは攻撃を仕掛けないようにしましょう。
二つ目は、サメの攻撃でケガをしてしまった場合、どれだけ浅い傷であっても速やかに医療機関を受診することです。その理由は主に二つあります。一つはサメによる死亡事故の犠牲者の主な死因が「失血死」であること、そしてもう一つは、サメの歯にはどのような雑菌が付着しているかわからないことです。
仮に切り傷程度の軽いケガであっても、必ず医療機関を受診するようにしてください。
シャークダイブって何?
「シャークダイブ」とは、サメを見る目的でダイビングすることです。国内・国外のさまざまなスポットで、専門のガイドさんなどの指導の下、安全に、かつ間近でサメ観察を楽しめるのがシャークダイブの魅力です。
次の章では、サメを間近で見てみたい方に向けて、人気のシャークダイブスポットをいくつか紹介していきます。
サメと出会えるダイビングスポット(国内編)
・伊豆半島(静岡県)
伊豆半島の南にある「神子元島」は大型の魚や、回遊魚が非常に多く訪れることで有名なダイビングスポットです。そして、この海域に潜るダイバーのお目当てとなっているのがシュモクザメです。シーズン中には100尾単位の大群が見られることもあり、ダイバーに人気があります。
・小笠原諸島(東京都)
「東洋のガラパゴス」と呼ばれている小笠原諸島は、ユネスコ世界自然遺産に認定されている世界的にも有名な自然の宝庫です。
ところで、国内のうち小笠原諸島でしか出会えない、めずらしいサメがいることをご存じでしょうか。
そのサメの名は「シロワニ」です。絶滅危惧種に指定されている極めて珍しいサメであり、日本では小笠原諸島でしか見られません。ちなみに、シロワニを目的としたシャークダイブのオススメシーズンは冬です。冬の時期、海中の洞窟などの場所ではかなりの高確率でシロワニと出会えます。
・伊戸(千葉県)
房総半島の南端にある伊戸には「シャークスクランブル」と呼ばれる人気のダイビングスポットがあります。ここでは主にドチザメと呼ばれるサメの大群が至近距離で見られます。竜巻のように餌に群がるドチザメたちの姿は圧巻です。
以前、伊戸の漁業者が仕掛けた定置網の獲物をドチザメがたべてしまうため、トラブルを解決するために地元のダイビングスクールがドチザメに餌付けをはじめました。その延長線上で、シャークスクランブルが生まれたのです。
漁業者、サメ、ダイバー、それぞれにありがたい存在である「シャークスクランブル」ぜひ一度見に行ってみてはいかがでしょうか。
・慶良間諸島(沖縄県)
慶良間諸島は渡嘉敷島や座間味島などの有人島があり、美しいサンゴ礁や雄大な自然の中で本格的なダイビングが楽しめるため、ダイバーからも人気のスポットです。
リーフの間で休んでいるホワイトチップリーフシャークがよく見られます。また、釣り場になっているダイビングスポットでオオメジロザメが現れることもあり、サンゴの産卵時期にはジンベエザメが見られることも。
サメと出会えるダイビングスポット(海外編)
・タイ
タイは日本から近く、リゾート地でのダイビングも盛んな国です。なかでも、タオ島やサムイ島、ピーピー諸島ではサメをウリの一つとしたダイビングが盛んに行われています。
タイのダイビングで見られるサメといえば、白地に黒の斑点模様が特徴のトラフザメです。日本でも多くの水族館で展示されているほど人気なトラフザメですが、ソフトコーラルと呼ばれるサンゴの中、自由に泳ぐ姿を間近で観察できることは大変魅力的です。またタイの島々では、運がよければ世界最大級のサメであるジンベエザメと出会えます。
トラフザメの雄大な姿を目に収めたい方にも、タイはオススメのスポットです。
・フィリピン
フィリピンにおけるシャークダイブのお目当てといえば、幻のサメとも呼ばれる「ニタリ」です。ニタリは、日本でもごく一部の期間をのぞいて水族館での飼育ができておらず、国内においてほとんど生きている姿を見られません。フィリピンのマラパスクア島では、めずらしいニタリが泳いでいる姿を間近で観察できます。
特に、ニタリの見どころは、カッターのようにシャープな尾びれとつぶらな瞳です。かわいらしいニタリが元気に動き回る姿が見たいサメ好きの方にとって、マラパスクア島は絶好のダイビングスポットとなっています。
また、フィリピンのリゾート地として有名なセブ島も、シャークダイブができるスポットとして有名です。セブ島南端の町オスロブには、一年を通してジンベエザメがおとずれます。ジンベエザメを間近で見られるダイビングの他にも、ジンベエザメへの餌付けや写真撮影は、観光客に人気のアクティビティです。
・モルディブ
インド洋に浮かぶモルディブ島はクリアブルーの海とサンゴ礁の島々に囲まれた世界有数の観光地です。また、モルディブ島は多種多様な生物と出会えるダイビングスポットとして、ダイバーから人気を博しています。モルディブ島では主にジンベエザメ、ナースシャーク、ネムリブカといったサメを見られます。
また、2021年6月にはモルディブ政府観光局公式の各種SNSに日本語版が設置されました。日本語のモルディブ情報がSNSで入手できるようになれば、モルディブは今後ますます日本人にとって身近なスポットになるでしょう。
・ミクロネシア
太平洋に浮かぶ無数の島々からなるミクロネシアは、グアム・サイパン・パラオといった人気のスポットを多く含み、ダイビングの聖地とも言われる国です。そんなミクロネシアの中でも、チューク環礁という地域には「シャークアイランド」と呼ばれる島があります。
シャークアイランド付近では、メジロザメをはじめとするさまざまなサメが見られます。さらには、世界でも珍しいサメのクリーニングシーンが見られることで有名です。クリーニングシーンとはサメが体の汚れや食べカスなどを小魚に食べさせる光景です。
ダイビングとサメについて まとめ
サメは危険なイメージとは裏腹に人を襲うことが極めて少なく、付き合い方さえ心得ていれば過剰に怖がる必要のない生物です。現在、国内や海外のさまざまなダイビングスポットでサメを目当てにしたシャークダイブが開催されるほど、サメはダイバーに人気があります。
「野生のサメを生で見てみたい!」「自然の中でサメと泳いでみたい!」という方は、ぜひシャークダイブへの参加を検討してみてください。ダイビングスクールマレアなら、国内外問わず、すべてのダイビングツアーでインストラクターが引率しますので、サメの心配もなく安全にダイビングが可能です。