ダイビングライセンスはあなたに合う指導団体を選ぼう!
更新日:2023.08.01.Tue   投稿日:2023.07.09.Sun目次
国内外を問わずスキューバダイビングを楽しむための第一歩であるダイビングライセンス講習は、水中で息ができない私達人間にとって大変大事なことです。
ただ、ダイビングライセンス講習の費用や日程、コース名、人数、年齢制限等々、ダイビングを提供するお店(以下、ダイビングショップ)によってバラツキがあり、特にこれからダイビングを始める方は困惑されることが多いです。
費用に関しては、各ダイビングショップが随時キャンペーンや特別価格等を提示しているため様々な設定がありますがですが、講習の期間や人数、年齢制限などのバラつきは、ダイビングショップが属している”指導団体”によって異なります。
このダイビングショップが属する”指導団体”を理解することで、スキューバダイビングの楽しみ方が変わってくるかもしれません。
これからダイビングをはじめる方はもちろん、ダイバーだけど指導団体って結局なんだっけ?という方も、ぜひ今回の記事を読んで今後のダイビングライフの参考にしてください。
ダイビング講習にかかる費用や日数は指導団体で違う
ダイビングをはじめる時に、まず知りたいのが費用や日数。なぜダイビングショップごとに違いがあるのか?
それは、上述した通り、各ダイビングショップが属している”指導団体”に違いがあるためです。
ダイビングの指導団体は、ダイビングの講習を修了した証明であるCカードを発行しているだけではなく、所属するインストラクターにダイビングの知識や技術のアップデートを提供したり、安全管理の指導や環境保全活動を啓蒙したりしています。
Cカードをダイビングのライセンス(免許)と認識している方が多いですが、ライセンスではなく証明カード(Certification Card)です。
ただ、スキューバダイビングに参加するためには各指導団体が発行するCカードの提示が必要なため、ライセンスと表現されている方が多いです。
そのCカードを発行する指導団体は、世界に200団体、日本国内に30団体もあります。
そして、指導団体によって理念が異なり、ダイビングの講習方法やコース名が違い、それに伴い講習の日数や金額に違いが出てくるということです。
指導団体によって潜れない国がある?安全面に違いはある?
単刀直入にいうと、どの指導団体を選んでもスキューバダイビングは楽しめます。ダイビングの指導団体を身近なものでわかりやすく例えると、スマートフォンの通信事業者です。
docomo、au、SoftBank、楽天モバイル等々、どこにするか迷いますが、結局どの事業者と契約をしても、端末を購入した後は特に不自由なく使えますよね?
違いといえば、ざっくりいうと金額やプラン名、データ通信量、接続のしやすさ、購入できる機種のメーカーです。
スキューバダイビングの指導団体も同じで、どの指導団体のCカードを取得しても水中の世界を楽しめることに違いはありません。これらの違いは、こちらもざっくりいうとコース名と、その後に簡単に不便なく潜り続けられるかどうかです。
つまりスマートフォンの通信事業者と同じく、指導団体もあなたにとってどのようなコースや金額が満足できるか?ということです。
ただ、誰もが知るスマートフォンの通信業者と違って、ダイバー業界でしかわからない指導団体は、訪れたダイビングショップで言われるがままに決まるため、ダイバーでも曖昧な方が多いです。
言われるがまま、となるとマイナスなイメージですが、よくない指導団体というものはほとんどなく、知名度が低い指導団体は詳細説明を割愛することが多いのです。
しかし、ダイビングを趣味とする上で指導団体は確実に大事な存在です。一番大きく影響するのが、指導団体の知名度と登録店の数でしょう。
Cカードをどこのダイビングショップで取得したかというより、自分のCカードがどこの指導団体か、ということがダイビングを続ける上で重要です。
これから、指導団体の知名度と、その知名度があなたのダイビングライフにどのように影響するのかを紹介します。
ダイビング指導団体 日本国内5選
世界では200団体、日本では30ほどある指導団体を、ここでギュッと選抜して5つ紹介します。この5つは日本で主要な指導団体で、ダイバーであれば必ず目にする指導団体です。
指導団体の特徴と、各団体の水深18mまで潜ることが可能なCカードのコース名、日数、年齢制限も紹介します。
なお、水深18mは、ダイビングを趣味として楽しむための標準とされていることがほとんどのため、その該当する各団体のコースを選んでおります。
(各指導団体、Cカード協議会 公式Webサイト参照)
PADI(パディ)
ダイビングの指導団体といえば、まずこの”PADI”の名前が上がるほど、知名度MAXの指導団体です。
なんと世界のダイバーの6割以上がPADIでダイビングをはじめており、1966年にアメリカ合衆国で創設されて以来、2800万枚以上のCカードを発行しています。(PADI Webサイト参照)
世界の180ヶ所以上でインストラクターを含むプロフェッショナルメンバーが13万5千人以上、ダイブセンター・ダイブリゾートは5800以上という世界最大規模のダイビング教育機関です。
規模の大きさもさることながら、PADIのカリキュラムは様々な国の大学で単位として推奨されており、ISO(国際標準化機構)認証、つまり品質の高さも認められているという、絶大な信頼を誇る指導団体です。
PADIはダイビングに対する一般の人々の関心を高め、期待に沿うプログラム開発に取り組むことを目的としています。その理念から、教材や講習カリキュラムが充実していることが特徴です。
▼PADIで水深18mまでダイビング可能なCカード▼
- オープンウォーターダイバー
- 講習最低日数:ー(推奨は31時間)
- 参加最低年齢:15歳
BSAC(ビーエスエーシー/ビーサック)
イギリスのロンドンで設立された世界最古のダイビング教育機関で、イギリス王室とも縁ある団体です。その縁の深さがわかるのが、BSACの名誉総裁。フィリップ殿下やチャールズ皇太子、ウィリアム王子(当時の敬称)という、そうそうたるメンバーです。
権威だけではなく、ダイバー特有の病気である減圧症(潜水病)を研究している学者が、減圧症にかからないようにするための「ダイブテーブル」を開発したり、世界で初めて水中撮影を行うダイバーが誕生したりと、長い歴史の中にスキューバダイビングへの貢献が鑑みえます。
各団体が様々な基本理念を掲げていますが、BSACは簡潔明瞭で「安全最優先」。とても冷たく厳しい環境であるイギリスの海だからこそ培われたこの理念は、世界中の部署へ継承されています。
▼BSACで水深18mまでダイビング可能なCカード▼
- オーシャンダイバー
- 講習最低日数:2日間
- 参加最低年齢:15歳
CMAS(クマス/シーマス)
CMASはフランス語で「世界水中連盟」の略で、フランスが発祥です。第二次世界大戦中にヨーロッパで水中活動が発展し、スキューバダイビングの交流の場としてCMASが生まれました。
CMASの活動はスキューバダイビングだけでなく、水中スポーツ、水中設備や水中科学等、多岐にわたり、現在世界の160カ国が加盟する水中活動の国連のような存在です。IOC(国際オリンピック委員会)やUNESCO(ユネスコ)等、数多くの連盟に加盟しています。
また、水中活動未組織国への設立支援や、水中活動における規則の国際的な統一、交流、振興、研究組織の仲介等、活動は幅広く、世界中のダイバーからの信頼は絶大です。
身近なことでいうと、水中では会話ができないため手話のように手で合図を送りますが、それを統一化したのはCMASです。
ちなみにフランスではCMASのインストラクターは国家資格とされています。海外でプロのダイバーとして活躍を志す方は知っておくべき団体です。
▼CMASで水深18mまでダイビング可能なCカード▼
- 1スター(オープンウォーターダイバー)
- 講習最低日数:3日間
- 参加最低年齢:15歳
※CMASは、日本独自の名称でCカードを発行可能な指導団体が複数あります。
NAUI(ナウイ)
こちらもアメリカ発で長い歴史がある指導団体で、2023年の現時点で63周年です。NAUIは世界で初めてスキューバダイビングのインストラクターコースを開催し、世界中のダイビング指導機関の基準を作った指導団体です。
NAUIのコース、プログラムの質の高さは世界中に認知されていて、ウォルトディズニーワールドリゾートやNASA、アメリカ海軍特殊部隊といった名だたる組織に採用されています。
NASAや海軍と聞くと体力的にハードな指導団体のようなイメージですが、NAUIの理念は「最愛の人を任せられる信頼」「教育を通じた安全なダイビングの実践」。
つまり、呼吸も重力も陸とは全く違う水中という環境を安心して楽しんでもらうということを理念としており、レジャーダイビングとしても大変信頼度の高い指導団体です。
▼NAUIで水深18mまでダイビング可能なCカード▼
- オープンウォーターダイバー
- 最低日数:規定なし
- コース参加最低年齢:15歳
SSI(エスエスアイ)
SSIもアメリカ設立で、SCUBA SHCOOLS INTERNATIONALの略です。現在130カ国以上、40カ国以上の言語の教科書を発行しています。SSIの特徴は、ダイビングとしての質を大変重要視しています。
一般的にインストラクターはダイビングショップに属さなくても活動できますが、SSIのインストラクターはダイビングショップに属さないと活動できません。
ダイビングショップに属さないインストラクターはフリーインストラクターと言われ、複数のダイビングショップで活躍できるなど柔軟性が高いですが、指導の質を監視される環境があまりありません。
SSIはそこを重要視し、SSIのインストラクターはダイビングの講習や質を常にチェックされている環境下です。
つまりSSIのインストラクターは常に品質が高い講習を行っているという証明でもあります。
▼SSIで水深18mまでダイビング可能なCカード▼
- オープンウォーターダイバー
- 講習最低日数:規定なし
- 参加最低年齢:15歳
以上が、今回選抜した日本国内の主要なダイビング指導団体です。
もっと詳しく指導団体を知りたい、もっとコースを知りたい等ありましたら、各指導団体のWebサイトにてご確認ください。
指導団体とダイビングショップ
日本国内の主要なダイビング指導団体を紹介しましたが、結局どこを選べば間違いないのでしょうか?ここで出てくるのが、ダイビングショップです。再度、スマートフォン通信会社で例えます。
どんなに良い機種や届きやすい電波、コスパの良いプランがあっても、スマートフォンショップのスタッフが案内するプランが、あなたに全然合わないものだと、そのショップはもちろんその回線も使わないという判断をする可能性が高いですよね。
例えば、楽天モバイルのデータ無制限プランは魅力的ですが、小笠原諸島では電波状況が悪くて使い物になりません。ダイビングショップも同じです。
どんなに有名で評判が良い指導団体でも、ダイビングショップがあなたに合わなければ、今後は使わないという判断になることがあります。それゆえに、日本では「Cカードは持っているけど取ったきり潜っていない」というダイバーが多いのです。
ただ、スマートフォンショップのようにコンビニ並に巷にあれば選ぶ機会や選択肢は多くありますが、ダイビングショップはそうはいきません。町に1件しかないこともざらにあります。
そして新規契約や機種変更くらいしかあまり訪れないスマートフォンショップと違って、ダイビングショップはライセンス講習はもちろん、その後もダイビングをするに当たって大変身近な情報源で、長くアフターサポートを受ける場所です。
ちなみにダイビングショップを通さなくても、各指導団体のCカードは取得可能です。
上述したダイビングショップに属さないフリーのインストラクターに講習を受けて、Cカードを発行してもらう道です。ただ、こちらは紹介ではない限り考えにくい道で、初心者にはおすすめしません。
スマホを持つのが初めての人に、いきなりSIMフリーのスマホと格安SIMをオンラインで購入することをおすすめするようなものです。ある程度の知識がない限り難しいでしょう。では、結局大事なのはダイビングショップ選びかというと、そうとも限りません。
どんなにショップの雰囲気や店員さんが良くても、今更3Gの回線や、機種が安いからといって無名メーカーのスマートフォンを使いませんよね?それと同じく、指導団体もダイビングショップも、自分が続けやすい、買いやすい環境というのがあります。
例えばあなたが、Cカードを取得してバリ島でマンボウを見たい!と現地に訪れたとします。そして、予約したダイビングショップに現地であなたのCカードを提示します。
そのCカードが日本で作られたような認知度の低いものだと、あなたがどんなにダイビングのスキルに長けていたとしても、安全のために1日目の1本目は体験ダイビングをするような穏やかで浅い場所へ案内される可能性が高いです。それは、担当するインストラクターが本当に知識と技術があるかのスキルチェックをおこなうためです。
逆にPADIやBSACのように認知度が高い指導団体のCカードだと、Cカードのランクも知れ渡っているので、それに応じた場所へ案内されます。特に、PADIのゴールドCカードや上位ランクのCカードを提示した場合は、質の高い講習を受けているという認識になります。
まずはダイビングショップの相性。そして、ダイビングショップがどの指導団体に属しているのか?国内外問わずスキューバダイビングを楽しむために大事なのはその2点で、どちらも欠かせないものであるということをお分かりいただければ幸いです。
ダイビングの指導団体はとても柔軟!
ここまでで指導団体を少々堅苦しく感じてしまった方へ、次は指導団体の柔軟の良さを紹介します。なお、以下に対応していない指導団体もありますので、詳細は各団体のWebサイトやダイビングショップにてご確認ください。
・有効期限、更新がない
指導団体によって名称の異なるCカードですが、免許ではないので、プロでない限り更新や有効期限といったものがない場合がほとんどです。(指導団体によっては年会費などがあります。)
例えば、20歳でCカードを取得したあとダイビングへ行ける機会がないまま、40歳になったとします。それだけの年月が経っていてもCカードは有効です。その指導団体が無くなっていない限り。※しかし日本では実際になくなった指導団体がいくつかあります。
逆に不安だと思いますが、基礎やルールもほとんど忘れてしまっているペーパードライバー以下のような状態なのに、そのCカードは有効なのです。
ただ安心してください。初めてのダイビングショップでダイビングを予約をする際には、最後にダイビングした日がいつなのかということを必ず聞かれます。例えリピーターさんや上級者であっても確認が必要なのです。
海をガイドするスタッフは、Cカードのランクだけではなく、あなたが最後にダイビングをしてからどれくらい期間が空いているのかという情報がセットで、ダイビングポイント(ダイビングする場所)をどこにするか、どういうルートにするか、他のお客さんとのチーム分けやスタッフが何人必要か、ということを判断します。
趣味でダイビングを楽しむレジャーダイバーの皆さんに、快適かつ、安全にダイビングをしてほしいというダイビングショップの意思は共通しており、そんなスタッフを育てているのも、指導団体なのです。
・指導団体はいつでも変更可能
もし自分に合わないと思った場合、指導団体をずっと同じにする必要はありません。
例えば、あなたが東京のダイビングショップでAという指導団体のCカードを取得後、転勤先が福岡に決まり、福岡でダイビングを楽しんでいるとします。ただ、使用している福岡のダイビングショップはBという指導団体で、あなたの持っているCカードとは違う団体です。
ダイビングを楽しむにあたっては問題ありませんが、自宅から近い場所で今後もお世話になりたいし、そのショップでスキルアップの講習を頼みたいということもあるでしょう。あなたはBという指導団体のCカードを初めから取得し直さなければならないのか?
答えはNOです。
水深18mまで潜れるランク(オープンウォーター)のCカードはAの指導団体だけど、30mまで潜れるCカード(アドヴァンス)はBの指導団体を持っているよ、ということは珍しくありません。
もし指導団体を変えたくなっても、特別に面倒なこともなく、何も問題はありません。他の指導団体でつづきのコースを受けることが可能です。
・指導団体の注意点
今回紹介した指導団体の柔軟さに、共通する注意点があります。それは、指導団体の認知度によってはイレギュラーな事態が起きる可能性があるということです。
スキューバダイビングの指導団体は、日本国内に30団体もあります。どの指導団体でもダイビングは楽しめますが、残念ながら認知度が低い指導団体は、上記の指導団体の柔軟さが不適応である可能性があります。
上述で、あなたがバリ島でダイビングする時を例えた通り、Cカードの認知度が低いと、このCカードを持ってるから次のステップに進ませて!と他団体のダイビングショップへお願いしても、講習の質やランクが国際的に認証されていないので、すんなりと進まない可能性が高いです。
もちろん指導団体は認知度さえあればなんでも良い訳でもなく、ダイビングショップとセットで考えることが大事ですが、初心者の場合はまずは指導団体の認知度を優先に判断されることをおすすめします。
あなたに合う指導団体でダイビングライフを満喫しよう!
再三になりますが、どの指導団体でも水中の素晴らしい世界を楽しめることは変わりません。
しかし、スキューバダイビングのルールや決まりごと、学び方など、どこに重きを置くかが指導団体によって少しずつ異なり、ライセンスを取得するための費用、日数、その後のダイビングを楽しむスタイルも変わります。
ダイビングの知識、技術、安全管理、基礎を統一する指導団体と、その指導団体に属しダイビングを広めるダイビングショップはどちらも欠かすことのできないものです。
そして両者とも、人と海とのコミュニケーションや関わりが何よりも大事です。
SNSでの情報収集が多くなり、インターネットやAIが発展し、人の行動がどんどん不要になりつつある風潮ですが、海の世界はまだまだ未知で、直接目で見て生物たちと触れ合わないと分からない環境です。
その自然環境を保全し、ダイビングの知識や技術を発展させ、海の素晴らしさを広める活動をする指導団体は、これから輝くあなたのダイビングライフに素敵な出会いと感動を与えてくれるでしょう。
この記事をきっかけに、魅力的なスキューバダイビングへの第一歩と繋がることができれば幸いです。